福岡高等裁判所 昭和61年(行コ)31号 判決 1992年5月26日
控訴人
岸裕三
右訴訟代理人弁護士
林健一郎
同
馬奈木昭雄
被控訴人
福岡県教育委員会
右代表者委員長
佐藤清
右訴訟代理人弁護士
國府敏男
同
石原輝
同
平井二郎
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す
2 被控訴人が控訴人に対し昭和五〇年七月二一日付でした免職の分限処分を取り消す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文と同旨
第二当事者の主張
当事者双方の主張は、次に付加するほか原判決事実摘示のとおりである(ただし、原判決九枚目表八行目の「承認性」を「承認制」と改める。)から、これを引用する。
一 当審における控訴人の主張
1 被控訴人の主張する控訴人の行動は、それぞれ「諸般の事情」とりわけ藤島校長の言動と「相互に有機的に関連づけ」、かつ、本件紛争の起こったゆえんとの関連で評価すべきであり、そうすれば、それらが従来の教育行政のあり方を急激に変えようとする被控訴人とそれに抵抗する現場教師集団との対抗関係、及び特殊久留米高校的事情として、被控訴人の方針を学校現場の実情を無視して機械的に持ち込もうとする藤島校長の硬直した姿勢とそれに抵抗する久留米高校の教師集団の対抗関係、という特殊な場面におけるものであって、原判決のいう「当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因」するとは言えないことが明らかである。
被控訴人の教育行政の反動化、教育の権力的統制に対して積極的に発言し行動することは、現場教師又はその集団である教職員団体の責務である。高教組の闘いの基調は、被控訴人によって侵害されている学校運営に関する民主的慣行、即ち職員会議の最高決議機関性、校務分掌の公選制などの回復であり、また非教育的な必修クラブ活動に対する抵抗であって、被控訴人が処分理由とする控訴人の行動は、この高教組の方針に基づくものであったのであるから、その行動についての責任を控訴人だけに負わせるのは誤りである。
控訴人の生立ち、担当教科、種々の教育活動等は原判決も認定しているところであるが、控訴人は教職に熱心に取り組んでいたため今もって生徒たちの深い信頼を集めており、教壇を離れてからも研修に励むなど、教育公務員として高い適格性を有しているのである。昭和四八年及び昭和五〇年にスト参加を理由とする戒告処分を受けたにしても、当時は国民生活に重大な支障を及ぼさない限り地方公務員の争議行為が許されるという認識が一般的であったのであるから、右の処分歴をもって公務員の適格性を欠く徴表とみるべきではない。
したがって、個々の抗弁事実について以下に指摘するところと相俟ち、本件処分は少なくとも被控訴人の処分権の濫用にあたることが明らかである。
2 抗弁事実について(いずれも被控訴人の主張するような大げさなものではなく、校務の運営にさしたる支障も与えていない。)
(1) 抗弁1の事実について
控訴人ら組合員は、物理的抵抗や実力による阻止などは一切行っておらず、もっぱら平和的な説得行為に終始し、藤島校長も校長室を出て廊下及び職員室入口、更には職員室内まで移動しているのであって、控訴人が他の組合員とともに校長の「前進を阻んで朝礼への出席を妨害し」たり「職務の執行を妨害した」ことはない。
(2) 抗弁2の事実について
藤島校長の職員会議を全く無視した発言がなければ、混乱も起こらず議事は進行していたのであり、半数以上の職員が退席する事態も控訴人の板書という行為もなかったのである。混乱の原因を無視して結果だけを非難するのは不当である。
(3) 抗弁3及び4の事実について
藤島校長は、第二組合員や非組合員の職員・教頭・事務長らに取り巻かれながら分会役員を実力で「排除」して職員室まで突進し、控訴人は、藤島校長及びその協力者の実力行使による「排除」と突進の結果ぶつかられて転倒したのであり、藤島校長はその転倒に関係なくそのまま進行を続けており、控訴人の転倒は何の妨害にもなっていない。
(4) 抗弁5の事実について
藤島校長は、控訴人の発言に同調した他の職員を黙らせようとして席を立ち移動したので、控訴人がこれに抗議を行ったのであり、また、秋吉教頭の説明に対しては多くの職員が口々に抗議したのであって、控訴人の発言によって教頭の説明が妨害されたというわけではない。
藤島校長がポスターを剥がしたことに対する控訴人の抗議の発言も僅か数十秒のことであり、しかも職員朝礼終了後学年会に移行する際のことであって、学年会には何の混乱も影響も与えていない。
(5) 抗弁6の事実について
朝礼は藤島校長の独断的、独善的な議事進行の命令に組合員らが抗議して既に混乱していたのであり、控訴人は決して大声で歌ったわけではなく、歌った時間もせいぜい一分以内であり、控訴人の「放歌」によって朝礼が混乱したわけではない。
(6) 抗弁7の事実について
委員会の会議は午後五時半ころには閉会が宣せられ、控訴人は、会議終了後入室し、組合と校長のやりとりに参加したにすぎず、会議の進行を妨害したことはない。
(7) 抗弁8の事実について
控訴人は午後五時過ぎに入室し発言したが、校長が退去を命じたのですぐ退室しており、再度入室した事実はない。
(8) 抗弁9の事実について
控訴人が出頭を命じられた一二月二三日から二五日までというのは学期末であり、控訴人の業務の都合がつかなかったので、控訴人は被控訴人に了解を求め、その承認のもとに、翌昭和五〇年一月一四日及び五月二二日に教育庁に出頭している。藤島校長は明らかに嫌がらせのために何回も繰り返し執拗に控訴人に出頭命令を言っていたに過ぎない。
(9) 抗弁10の事実について
生徒会は、必修クラブに対する問題点について藤島校長との話し合いを希望していたが、この生徒会の要望に対し、教育者として真剣に正面から対応せず、強権的一方的に強行をはかった藤島校長の態度が混乱を生み出した本質的原因である。控訴人は、校長室に二人の生徒がやって来た声を聞いて、校長室に秋山教諭とともに行ったのであって、生徒と一緒に「押しかけ」たわけではない。しかも、控訴人は藤島校長とともに三年二組に事情説明に行くなど、混乱の解決に協力している。
(10) 抗弁11の事実について
この日は、藤島校長が従来の職員会議の慣行を一方的に破って、自ら司会を行おうとしたことに対し多数の職員が抗議したが、校長はその抗議の最中に、これまた一方的に人事異動の説明を始めたので、控訴人ら多数の職員は更に校長の態度に抗議し、抗議の一態様として退席したのである。混乱の原因は従来の慣行を一方的に破った藤島校長の権力的態度にあり、控訴人は、その間、抗議の発言をし退席したが、文書を校長から取り上げたり再入室した事実はない。まして、釣竿様の棒を持ち込み、床や机を叩いた事実は全くない。
(11) 抗弁12の事実について
控訴人の行為は、藤島校長の強権的一方的な司会及び議事進行に対する抗議の中で生じたもので、混乱の原因は藤島校長の行為にある。
さらに、会議が閉会されたのは控訴人の行為の結果ではない。教頭の入試要項の説明は一応終了し、議題が校務分掌に移ったところ、「公選」の声があり、選挙管理委員が前に出てきたところ、校長やそれに従った一部の教諭が一斉に退席したために会議は中止されたのである。
(12) 抗弁13の事実について
吉田教諭の分会会議の連絡の発言は、朝礼が終了し、学年会へ移行する際に行われたもので、藤島校長の組合に対する敵視、反感に基づく無用の制止行為が不必要な混乱を起こす原因となっている。
(13) 抗弁14(一)の事実について
本件は、四時限目終了後わずか五分間に調査票の提出を求めた藤島校長の非常識な職務命令こそが問題であり、その結果、控訴人のクラスだけでなく他の多くのクラスからも、多くの未提出や通常でない記入の調査票が多数提出された。
(14) 抗弁14(二)の事実について
控訴人は、太田委員長の指示に従い、再提出するよう生徒に指導したが、これに従わない生徒が生じた(他のクラスにも同様の生徒が多数あった。)のは、藤島校長の生徒に対する教育者として全く誠実さを欠いた態度に対する生徒達の不信感がその原因である。即ち、久留米高校の生徒達も必修クラブの実施に反対していたのであるが、これを強行しようとする藤島校長の姿勢に不信感を持ち、自暴自棄的な対応として不真面目と見られる記載をするなどしたのである。ちなみに、現在では、文部省自身も必修クラブ活動の画一的施行を断念するに至っているところである。
(15) 抗弁14(三)の事実について
控訴人から校長に電話をかけた事実はなく、別に反抗的な態度に終始したわけではない。
二 当審における被控訴人の主張
1 クラブ活動についてのアンケートにおいて不真面目な回答が多発したのは、控訴人が担任した三年三組だけであり、控訴人がアンケートの指示事項を無視してもよいというが如き発言をしたことが窺えるのである。したがって、不真面目な回答が多発したのは、生徒が藤島校長の態度に反感を持ったためではなく、控訴人の指導によるものとみるべきである。調査書未提出は他のクラスにもあったが、太田委員長の再度の提出要求に応じて全て提出され、最後まで提出しなかったのは三年三組だけであり、不真面目な回答が生徒本人の発意によるものであったとしても、担任教師が適切な指導を行ってこれを是正させるよう努めるべきことは、教育公務員として当然である。現に当該学級においても、控訴人が免職された後、他の教諭により適切な指導が行われた結果、他の学級並みに回答が回収された。控訴人は、生徒に対する適切な指導を放棄したものであり、更には学校内における秩序無視がまかり通ると生徒達に感じ取らせる姿勢をとり、生徒達の人間形成上悪影響を及ぼしたものであって、この点だけからしても控訴人が教育公務員としての適格性に欠けるところがあることは明らかである。
なお、文部省が平成元年三月に告示した新学習指導要領において示されている学校の事情に応じてクラブ活動を実施するという方針は、本件処分当時の指導要領における「クラブの種類や数は、生徒の希望、男女の構成、学校の伝統、施設設備の実態、指導に当たる教師の有無などを考慮し、適切に定めること。」と同趣旨であり、当時の久留米高校でも既に行っていたところである。
2 被控訴人が本件処分に際して不適格事由として挙げた控訴人の諸行為は、いずれもこれが教師のやることかと非難されるものばかりで、これを正当視できるものはない。控訴人は、組合活動の一環として他の教師と同じことをしたにすぎないと主張するもののようであるが、控訴人の諸行為は他の組合員教師の行為とは甚だしく異質であり、組合活動とは無縁のものであり、しかも、時と場所をわきまえずに常軌を逸した行動を長期間にわたって行っていることは、それが一過性のものではなく、控訴人の本来的性格に由来するものというべきである。
また、控訴人の担任した生徒達が控訴人につき楽しい思い出を持ち、良い教師であるとの印象を持っているとしても、それは控訴人が生徒達と一緒に遊んだとか、友人として課外の勉強を共にしたとか、人気取り行為をしたというだけのことであって、教師として尊敬されているわけではなく、これらのことが控訴人の教育公務員としての適格性を認めるべき理由とはなりえない。
けっきょく、控訴人は教育公務員として不適格であることが明らかであり、被控訴人が地公法二八条一項三号により分限免職処分を行ったことは適法かつ正当である。
第三証拠
原審及び当審における訴訟記録中の各証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する(略)。
理由
第一 当裁判所も、控訴人に原判決認定の一連の言動(原判決理由二の2の(一)ないし(一七))があったとの事実を肯認すべきであり、右事実に照らすと、控訴人主張の諸点を考慮に入れても、任命権者である被控訴人が控訴人につき地方公務員法二八条一項三号の規定に該当する免職事由があるとして行った本件分限処分には、任命権者に許容された裁量権の行使を誤った違法があるとまではいうことができず、本件処分が違法であるとしてその取消しを求める控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。
その理由は、次に付加し訂正するほか、原判決理由に説示のとおりであるから、これを引用する。当審における新たな証拠調べの結果によっても右の認定判断を覆すに足りない。
一 原判決一五枚目裏三行目に「証人藤島優」(本誌四九二号<以下同じ>88頁1段11行目の(人証判断略))とあるのを「原審証人藤島優」と、同裏五行目の「及び同田島清司の各証言」(88頁1段11行目の(人証判断略))とあるのを「同田島清司、当審証人高野幸雄、同西田豊、同古庄健一、同平岡靖治及び同太田進の各証言」と、同行、同裏六ないし七行目(88頁1段11行目の(人証判断略))、同裏一〇行目の各「原告本人尋問の結果」(88頁1段11行目の(人証判断略))とあるのをいずれも「原審及び当審における控訴人本人尋問の結果」と、それぞれ改める(以下に「原告本人」とあるのは、いずれも「原審及び当審における控訴人本人」と読み替える。)。
二 原判決一六枚目表初行に「職員会議」(88頁1段15行目)とあるのを「職員会」と、同表四行目に「二四条」(88頁1段19行目)とあるのを「二二条ないし二四条」と各訂正する。
三 原判決二一枚目表八、九行目に「証人藤島優」(89頁3段15行目の(証拠略))とあるのを「原審証人藤島優」と、同九ないし一〇行目に「及び吉武哲夫」(89頁3段15行目の(証拠略))とあるのを「、同吉武哲夫及び当審証人古庄健一」といずれも改める。
四 原判決二二枚目裏三行目及び四ないし五行目に「証人藤島優」(89頁4段24行目の(証拠略))とあるのを「原審証人藤島優」と、同二三枚目裏五行目に「証人吉武哲夫及び同田島清司」(90頁1段26行目の(証拠略))とあるのを「原審証人吉武哲夫、同田島清司及び当審証人古庄健一」といずれも改める。
五 原判決二三枚目裏末行及び同二四枚目表初行に「証人藤島優」(90頁2段5行目の(証拠略))とあるのを「原審証人藤島優」と、同二四枚目表九行目に「数学科教官室」(90頁2段14~15行目)とあるのを「数学科教員室」と、同二五枚目表一〇行目及び末行に「証人藤島優」(90頁3段20行目の(証拠略))とあるのを「原審証人藤島優」と、同二五枚目裏九ないし一〇行目に「英語教員室」(90頁3段28行目)とあるのを「英語科教員室」と、同裏一二行目に「数学教員室」(90頁3段末行目~4段1行目)とあるのを「数学科教員室」と、それぞれ訂正する。
六 原判決二七枚目表九行目に「成立に争いのない」(91頁1段18行目の(証拠略))とあるのを「被控訴人主張のとおりの写真であることに争いのない」と、同九ないし一〇行目に「証人藤島優」(91頁1段18行目の(証拠略))とあるのを「原審証人藤島優」といずれも改め、同二八枚目表三行目に「見えいように」(91頁2段10行目)とあるのを「見えないように」と訂正する。
七 原判決二八枚目表九行目(91頁2段18行目の(証拠略))、同裏一一行目(91頁3段3行目の(証拠略))及び末行(91頁3段3行目の(証拠略))に「証人藤島優」とあるのを「原審証人藤島優」と、同裏末行から同二九枚目表初行にかけて「及び同山口高繁」(91頁3段3行目の(証拠略))とあるのを「、同山口高繁及び当審証人西田豊」と、同裏一二行目(91頁4段4行目の(証拠略))及び同三〇枚目裏五行目(91頁4段27行目の(証拠略))に「証人藤島優」とあるのを「原審証人藤島優」といずれも改め、同三〇枚目裏七行目の「証拠はない」(91頁4段29行目)の次に「(原審における控訴人本人尋問の結果によっても右認定を左右するに足りない。)」を加える。
八 原判決三一枚目裏四行目の「甲第七三号証」(92頁1段27行目の(証拠略))の前に「甲第三八号証」を加え、同裏六行目に「第三一号証の一、二」(92頁1段27行目の(証拠略))とあるのを「第三一ないし第三四号証、第三六、第三七号証、第三九、第四〇号証」と、同行に「証人藤島優」(92頁1段28行目の(証拠判断略))とあるのを「原審証人藤島優」と、同裏八行目に「及び同丸山満」(92頁1段28行目の(証拠判断略))とあるのを「、同丸山満、当審証人古庄健一及び同平岡靖治」と、同裏九行目に「証人丸山満」(92頁1段28行目の(証拠判断略))とあるのを「原審証人丸山満及び当審証人平岡靖治」といずれも改める。
九 原判決三三枚目表二行目の「強硬」(92頁3段4行目)を「強行」と訂正し、同三四枚目裏六、七行目(93頁1段1行目の(証拠略))、同三五枚目一一、一二行目(93頁1段22行目の(証拠略))、同三六枚目表五、六行目(93頁2段14行目の(証拠略))、同三七枚目表初行(93頁3段7行目の(証拠略))及び三行目(93頁3段7行目の(証拠略))に「証人藤島優」とあるのを「原審証人藤島優」と、同表四行目に「及び山口高繁」(93頁3段7行目の(証拠略))とあるのを「、同山口高繁、当審証人太田進及び同平岡靖治」といずれも改める。
一〇 原判決三八枚目表八行目の「乙第七号証、」(93頁4段15行目の(証拠略))の次に「原本の存在及び成立ともに争いのない乙第六八号証の一、」を加え、同行(93頁4段15行目の(証拠略))の「証人藤島優」とあるのを「原審証人藤島優」と、同表九行目に「及び同山口高繁」(93頁4段15行目の(証拠略))とあるのを「、同山口高繁及び当審証人太田進」といずれも改める。
一一 原判決三八枚目裏九行目の「証人藤島優及び同秋吉茂」(93頁4段30行目の(証拠略))とあるのを「原審証人藤島優、同秋吉茂及び当審証人太田進」と、同三九枚目表一一行目の「証人藤島優」(94頁1段19行目の(証拠略))を「原審証人藤島優」といずれも改める。
一二 原判決四〇枚目表初行の「前掲」(94頁2段8行目の(証拠略)、<以下同じ>)から同表二行目の「乙第二号証」までを「前掲乙第九号証、成立に争いのない乙第二号証、第一〇号証、甲第一〇六号証」と、同表二ないし三行目に「第三九号証の一ないし三、」とあるのを「当審証人平岡靖治の証言により成立を認められる甲第一〇八号証の一、第一〇九号証、当審証人古庄健一及び同平岡靖治の証言」といずれも改める。
一三 原判決四〇枚目裏一一行目の「担当し、」(94頁3段6行目)の次に「放送研究会の顧問としては、全国放送コンクールに参加し昭和四八年度・昭和四九年度は続けて第一位になり、」を加える。
一四 原判決四三枚目表七行目の「不謹身」(95頁1段31行目)を「不謹慎」と、同裏初行の「従わうとしない」(95頁2段10~11行目)を「従おうとしない」といずれも訂正する。
第二 控訴人の主張に対する付加判断
一 控訴人は、控訴人ら組合員はもっぱら平和的な説得行為に終始し、藤島校長も校長室から職員室内まで移動しており、控訴人が校長の「前進を阻んで朝礼への出席を妨害し」たり「職務の執行を妨害した」ことはない旨主張するが(抗弁1・3・4)、明らかに説得を拒否して職員室へ向かおうとする校長を取り巻き、その前面に立ちはだかり、或いは意図的に前面に転倒し、校長が前進するためにはこれを排除するか、迂回を余儀無くせしめたことは、職務の執行を妨害したことにほかならなず、控訴人らの妨害にもかかわらず校長が職員室内まで移動することができたとしても、妨害行為が効を奏さなかったにすぎず、妨害が無かったことにはならない。
二 また、控訴人は、混乱の原因が藤島校長の言動にあると主張するが(抗弁2・6・11・12・13・14)、要は控訴人らの所属する高教組のいわゆる学校運営に関する民主的慣行、即ち職員会議の最高決議機関性、校務分掌の公選制などの要求及びいわゆる必修クラブ活動に関する要求に藤島校長が従わなかったということであるところ、学校教育法五一条、二八条、福岡県立学校管理規則等に照らすと、校長が職員会議を主催し、自ら校務分掌を定めること及び学習指導要領に従ったクラブ活動を採用しようとすることは何ら違法ということはできないのであり、高教組の組合員らが藤島校長を説得し従来の慣行の尊重を要求したり、必修クラブ活動の採用に慎重を期するよう要求するについては、自ら一定の限度がある。そして、これらの問題についての藤島校長の対応が、他の校長に比し強硬ないし性急ともみられるものがあったにしても(例えば、<人証略>には、これに副う供述がある。)、それだからといって、同校長に対して著しく常軌を逸した乱暴な言動に出ることが正当視されるということにはならない。本件処分が、高教組の運動方針に従った組合員のうちの控訴人だけに責任を負わせるものという控訴人の主張は失当である。
三 控訴人は、控訴人の行動は、それぞれ「諸般の事情」とりわけ藤島校長の言動と「相互に有機的に関連づけ」、かつ、本件紛争の起こったゆえんとの関連で評価すべきである旨主張するのであり、分限処分についての任命権者の判断が合理性をもつものとして許容されるかどうかを検討するについて右のような考慮が必要とされることは当然である。
しかるところ、本判決の引用する原判決は、理由二の1において、本件に至る経緯及びその背景について、詳細に認定し、かつ、同二の3において、控訴人の経歴及び社会環境等についても認定したうえ、これら諸般の事情を総合的に検討した結果、本件処分理由となった控訴人の言動は著しく常軌を逸しており、公務員としての組織秩序遵守の精神を欠如し、この職に必要な適格性を欠く場合に該当するのみならず、到底職員団体のための正当な行為とは目し難いと判示しているのであって、その判断は首肯しうるものである。なお、控訴人がストライキ参加を理由として二度の戒告処分を受けた事実をも適格性判定上の徴表とみることが違法であるということもできない。けっきょく、本件処分が被控訴人の処分権の濫用にあたるという控訴人の主張も採用することができない。
第三 よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 友納治夫 裁判官 柴田和夫 裁判官渕上勤は転補につき署名押印することができない。裁判長裁判官 友納治夫)